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詩人の目

この詩は、今回の地震、それに続く原発事故のあとに書かれたものではなく、
1994年に発表されたものだそうです
19年前です

どうぞ、どうぞ読んでみてください


この詩人の目の先見に驚く
驚くを通り越して ただ鳥肌が立つ

詩人の透明な目が、世界をみると本当のことが、みらいのことまでも、立ち現れてくるんだ

透明な目をもつことを諦めてはいけない、
この世界で、この社会で、毎日お金をつかって、電気をガスを水をつかって 
テレビをみて、子どもを3人育てていても

透明な目をもつことを諦めたくない
そこに現れてくることに 目をそらせたくない




神隠しされた街   若松丈太郎


四万五千の人びとが二時間のあいだに消えた
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ
ラジオで避難警報があって
「三日分の食料を準備してください」
多くの人は三日たてば帰れると思って
ちいさな手提げ袋をもって
なかには仔猫だけを抱いた老婆も
入院加療中の病人も
千百台のバスに乗って
四万五千の人びとが二時間のあいだに消えた
鬼ごっこする子どもたちの歓声が
隣人との垣根ごしのあいさつが
郵便配達夫の自転車のベル音が
ボルシチを煮るにおいが
家々の窓の夜のあかりが
人びとの暮らしが
地図のうえからプリピャチ市が消えた
チェルノブイリ事故発生四十時間後のことである
千百台のバスに乗って
プリピャチ市民が二時間のあいだにちりぢりに
近隣三村あわせて四万九千人が消えた
四万九千人といえば
私の住む原町市の人口にひとしい
さらに
原子力発電所中心半径三〇㎞ゾーンは危険地帯とされ
十一日目の五月六日から三日のあいだに九万二千人が
あわせて約十五万人
人びとは一〇〇㎞や一五〇㎞先の農村にちりぢりに消えた
半径三〇㎞ゾーンといえば
東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町
富岡町 楢葉町
浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約十五万人
私たちが消えるべき先はどこか
私たちはどこに姿を消せばいいのか
事故六年のちに避難命令が出た村さえもある
事故八年のちの旧プリピャチ市に
私たちは入った
亀裂がはいったペーヴメントの
亀裂をひろげて雑草がたけだけしい
ツバメが飛んでいる
ハトが胸をふくらませている
チョウが草花に羽をやすめている
ハエがおちつきなく動いている
蚊柱が回転している
街路樹の葉が風に身をゆだねている
それなのに
人声のしない都市
人の歩いていない都市
四万五千の人びとがかくれんぼしている都市
鬼の私は捜しまわる
幼稚園のホールに投げ捨てられた玩具
台所のこんろにかけられたシチュー鍋
オフィスの机上のひろげたままの書類
ついさっきまで人がいた気配はどこにもあるのに
日がもう暮れる
鬼の私はとほうに暮れる
友だちがみんな神隠しにあってしまって
私は広場にひとり立ちつくす
デパートもホテルも
文化会館も学校も
集合住宅も
崩れはじめている
すべてはほろびへと向かう
人びとのいのちと
人びとがつくった都市と
ほろびをきそいあう
ストロンチウム九〇 半減期   二七.七年
セシウム一三七   半減期      三〇年
プルトニウム二三九 半減期 二四四〇〇年
セシウムの放射線量が八分の一に減るまでに九十年
致死量八倍のセシウムは九十年後も生きものを殺しつづける
人は百年後のことに自分の手を下せないということであれば
人がプルトニウムを扱うのは不遜というべきか
捨てられた幼稚園の広場を歩く
雑草に踏み入れる
雑草に付着していた核種が舞いあがったにちがいない
肺は核種のまじった空気をとりこんだにちがいない
神隠しの街は地上にいっそうふえるにちがいない
私たちの神隠しはきょうかもしれない
うしろで子どもの声がした気がする
ふりむいてもだれもいない
なにかが背筋をぞくっと襲う
広場にひとり立ちつくす

                    連詩「かなしみの土地」より




私はこの詩と、詩人アーサービナードの朗読で出会いました。
詩人の朗読により、一つひとつ読み上げられる地名が、3.11の原発事故のあと、
アナウンサーが「ただちに避難してください。」と繰り返していた地名そのままで
聞いてるうちに、そのときの不安で恐ろしい感覚がよみがえってきました。

アーサービナードは、「ひとのあかし」(清流出版)というタイトルでこの詩を対英訳つきで、今年に入って出版しています
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都心の高層ホテル。

エレベーターは音もなく私を引き上げ、33階で止まる。
歩くたび靴が心地よく沈んでいく、絨毯が敷き詰められた廊下を歩いて、ある部屋の前にいく。

真鍮のドアノブをまわし、分厚い木製のドアを押すと、なかには人がいる。
そのことは、もう前から分かっている。
ずっとここに来たかったんだ。

親密な気持ちで、窓の外に小さく見える都会の姿を一緒にみる。
その人といることで、私は自分がほんとうにふさわしい場所にいるように感じて、心地よい。


心の中で、最近よくうかぶイメージ。
その人とは、たぶんもう一人の自分なんだと、思う。

きのうは、ぼとぼととした重い雪に降られながら 駅にむかった

ことしはまだ、雪が積もらないな
プロフィール

ita-j

Author:ita-j
板坂 淳子(山本 淳子)
1974年生まれ
関西在住

家族 夫と3人の娘

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