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あのころ

久しぶりに、村上春樹の『ノルウェイの森』を手に取った。

いつのまにか、私はノルウェイの森に出てくる、自身の大学時代を回想する主人公と同じ齢になっていることに気付く。

私も、大学時代、いろんな人に出会った。
出会った人たちの濃さ、バラエティで言えば、それまでのどんな時代とも、それからのどんな時代とも、比較にならないだろう。今となっては、それらの思い出は、適度にセピア色になってきて、ようやく「ながめる」ことができるようになったようにおもう。痛いような、切ないような思い出さえも、だんだん「ながめる」ことが、できるように、なってきたように感じる。20年たって、少しずつ。

ノルウェイの森の主人公も、そうやって、必要な年月を経過して、ようやく文章という不完全な器に、不完全な思い出を盛ることができた、と書いている。

私も、ノルウェイの森の主人公と、同い年になったのだ。
知らぬ間に私は、一時代、超えてしまっているんだ。そして、もう二度と、あの色の世界を歩く事はないんだな、ということに気付く。

ある種の安堵と、さみしさとともに。


一人、大学時代の知り合いで、今でも親しく付き合いのある人がいる。
ある意味、一番強烈な出会いを残していった人だ。
その人は、私の自宅で、毎日靴下を探していたり、ベランダでタバコを吸ったりしている。
私の自宅が、その人の自宅でもあるので、仕方がない。

大学で会っていたその人は、もっと痩せていて、筋肉質で、目が鋭かった。
そんな思い出も、セピア色だなぁ。
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この2~3日で、村上春樹のある小説を読み返していた。

この小説は、私にとってなにかとくべつなものになっていて、読み始めると止まらなくなる。しかし、読み終えると、自分が現実にいる場所から、何百キロも離れたところに置き去りにされたよう気分になる。

読み終えるたびに、不安、混乱、心地よさが、胸の中でまだら模様になって、自分の中が、なかなか収拾がつかなくなる。
若くて、一人だったころは、とくに、そうだった。



私が、先週金曜日に行った、夙川の美術館のとなりに、なんとなく感じのいい公立小学校があった。
道から、教室内がよく見えるところがあって、わいわいと賑やかな声が聞こえていたので、三女とのぞくと、元気に子供たちが教室の掃除をしていた。

今、知ったんだけど、そこが村上春樹の、出身小学校であるそうです。


本屋さんでの朗読会

我が家の近くの、いつもお世話になっている本屋さん、長谷川書店で、ときどき店員をやっていた(今も店員やることあるのかな)みらいくんの詩の朗読会があり、おじゃましてきました。

こじんまりした本屋さんの奥の床にござをひいて、アットホームで素敵な朗読会でした。

集った方々、みんななんだか初対面と思えなくて。
不思議と、同じ星から地球に遊びに来ている、久しぶりに会えた古い友人、みたいな気がしました。


みらいくんの詩と太鼓、ありがとう。
まだまだ臆病なところのある私ですが、この世界のこと、やっぱり信じていいんだ、と思ったよ。

The reason

映画『ラースと、その彼女』を見ました。

シャイな青年、ラースに、彼女ができる。しかし、彼女はリアルドール。
はじめは、そのカップルをみて、ぎょっとしていた、親族や街の人々も、ラースと人形のビアンカの関係をそのままに受け入れていく。そうしているうちに、ラースは自らの幻想の中にいるまま、ビアンカを葬り、新たな人生へと向かう‥というお話です。


ラースの異常と思える行動を心配した兄夫婦が、町医者にラースを見せたときに、その町医者が言った言葉に、はっとしました。
「ビアンカは、理由があって現れたのよ。」

そうか、すべてのことには、それにふさわしい理由があるんだ。
普段、私たちが気づけないでいるだけで。

なんだか、腑に落ちないと思えることだって、きっとそこには、ふさわしい理由が隠れているんだなぁ、ってあらためて気づいたのです。


陽の光が、日々春めいてきていることも。
時々起こす、次女の突然のかんしゃくも。
なんだかつまらなく思えるあの人の態度も。

私がこうして生きていることも、きっと。
大切で目に見えない理由があって、目の前に現象としてあらわれているのだろう、と気づきました。


ラースの、おかしい行動をそのままに受け入れていく、周りの人々も素晴らしかったです。
ラースは、その理解の中で、自ら、自分の傷を癒していく力を得ていくのです。

必要なものは、現れては去っていく。
その時々で、受け入れていける度量を持ちたいです。

読書の秋 #8 

滞りがちだった、この読書の秋企画が、突然のパソコンの故障により中断。
その後、なかなか再開できなかったのですが、ずっと気になっていました。

今日は、私にとってとても大切な本について書かせていただいて、一応の締めとしたいと思います。


神谷美恵子日記 (角川文庫)神谷美恵子日記 (角川文庫)
(2002/01)
神谷 美恵子



この本を手に取ったのは、6年ほど前だったと思います。
以前の職場にいたとき、自分の生き方のこと、仕事のこと、いろいろなことに悩んでいた時期があり、そのころに出会った本でした。

この本には、25歳から、晩年65歳までの神谷美恵子さんの日記がおさめられています。
そこには、神谷さんの臨床医学への理想に燃える思い、しかしながら、子育て、結婚生活でどうにも立ち回れないもどかしさ、経済的な問題、美しいものへの確かで鋭い感覚、自分の中の弱さと強さの葛藤‥、そんな日々のさまざまな思いが、詰め込まれています。

神谷さんにとっては、極めて個人的な記録として書いたものであり、世に発表するつもりはなかった文章です。当時、神谷さんの著作に入り込んでいた私にとっては、著作のうらにある、神谷さんの現実を知る貴重なものであり、自分の境遇や思いと、大それたことながら、重なるところもあると感じて、何度も読み返しました。
それ以来、この本は本棚にしまわれることはなく、常に私の机の上にある本になりました。


「宇宙にちらばる偶然か、あるいは何者かの大きな意図の下にか、かかる畸形的産物が存在して、小さな役割を果たしていく、それだけのことだ。そこに限りない生甲斐と安心とよろこびを感ずる」(本文中より)

語学堪能で西洋の文学にも造詣が深い神谷さんは、『いきがいについて』に代表される著作を残し、ハンセン氏病の療養所、長島愛生園に通い、精神科医として働いていらっしゃっいました。時に聖女のように評される神谷さんですが、この日記を読むと、どんな人でも、現実や他者との間にずれや揺れ、苦しみを感じながら、人生を模索していくしかないのだな、と思わされます。


先日、久しぶりに、以前の職場の先輩格にあたるKさんが「どうしてる?」と電話をくださいました。
三女の出産で離れた職場ですが、当時、一緒に仕事していた人たちも、次々に結婚や妊娠が決まり、職場から離れる方もいたりして、動きがあるようでした。

Kさんは、その仕事に対する姿勢や、人への対応に、本当に学ぶものをたくさん下さった方です。
その方との長い電話の中で、私のこれからの仕事は、やはり以前のものと方向性を変えてはならない、と思えてきました。

一時は、いやで、苦しくて、どうしたらいいか分からず、自分が役に立っている実感なんてこれっぽっちも持てず、向いていない、無理、もう辞めよう、そんなことばかりうかんで来た仕事でした。
妊娠を理由に、現場を離れることができて、正直、さみしさを感じながら、ほっとしたことも事実でした。

仕事は、また私を日々悩ませ、疲れさせる、きっとそうだと思います。
けど、またKさんと仕事の話をしたい。その方面の仕事を無視することは、なぜかどうしてもできないのです。


そんな時、久しぶりにぱらぱらとめくった神谷美恵子著『生きがいについて』の中にある、こんな文章が目に飛び込んできました。

「自己に対してあわせる顔のないひとは、次第に自己と対面することを避けるようになる。心の日記もつけられなくなる。‥たとえ心の深いところでうめき声がしても、生活をますます忙しくして、これをきかぬふりをするようになる。‥この自己にたいするごまかしこそ、生きがい感を何よりも損なうものである。‥」


私という「かかる畸形的産物」が、この宇宙の下で、自分に与えられた小さな役割りに、自分をごまかすことなく向き合うことができるのか。不安はいっぱいです。

はたから見てて、みっともなくても、なんとも不器用でも、自己に対して正直であろうとする勇気を持つこと。そのことは、今の自分に最も欠けてる部分です。もう若くはないと言われる年になる私は、自分へのごまかしにも、いい加減無理がきかなくなっている、そういうことなのかもしれません。
きっと私のこと、仕事をしたら、また辞めたくなるんだろう。けど若いときにあった、変な強がりからは、少し自由になれたはず、と思います。


来春からの、身の振り方‥、少しずつ、考えます。


「読書の秋」企画、あまりうまく行かなかったけど、自身が読んだ本について書くこと、面白かったです。
お付き合いただいた方、どうもありがとうございました。
プロフィール

ita-j

Author:ita-j
板坂 淳子(山本 淳子)
1974年生まれ
関西在住

家族 夫と3人の娘

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